土地や建物をはじめとする不動産を購入するにあたって、仲介業者が入り、売買取引に関する事項について一応の説明を受けたが、売買契約締結後に当初の契約では想定しない新たな事態が発生しその対処のために損害が発生した、しかし、その事項については売主や仲介業者から説明を受けていなかった。

このような場合において、不動産の買主は、損害の填補を行うために、売主または売買契約を仲介した宅建業者に対し、説明義務違反に基づいて損害賠償請求をすることが考えられます。

もっとも、仲介業者や不動産の売主は買主に対し全ての事項について説明をしなければならないものではないことから、問題となっている事項について説明がなかったとしても、これらの者に対する説明義務違反に基づく損害賠償請求が必ず認められるわけではありません。

それでは、どのような事項の説明が無かった場合に、仲介業者等の説明義務違反に基づく損害賠償請求が認められるのでしょうか。

以下では、説明義務が認められうる事項や説明義務違反が認められる場合において損害賠償請求が認められる範囲等、説明義務違反に基づく損害賠償請求の概略について解説をしていきます。

説明義務の存在とその違反について

まず、説明義務違反が認められるためには、当たり前のことながら売主又は仲介業者に説明義務が存在しなければいけません。

それでは、どのような者がどのような説明義務を負うのでしょうか。

宅建業者は法令に基づき説明義務を負いうる

まず、不動産売買の売主または仲介業者が宅建業者である場合は、宅建業法に基づき、法定の事項について以下の通り説明義務を負うことになります。

第三五条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

一  当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)

二  都市計画法 、建築基準法 その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要

三  当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項

・・・・

注意すべき点は、仲介業者が宅建業者である場合において、例えば仲介業者が買主側の業者でなく売主側の業者であって買主側と直接の委託関係が無かったとしても、売主側の仲介業者は取引関係に入った者に対して、権利者の真偽につき格別に注意する等の一般的注意義務を負うということです(最判昭和36年5月26日判決)。

したがって、損害賠償請求を行う側と委託関係のない仲介業者であっても、その仲介業者は相手方に対し説明義務違反による責任を負いうることになります。

説明義務を負う事項は宅建法上のものに限られない

売主または仲介業者が宅建業者である場合は、上記の通り、宅建法上、不動産の売買に関し説明をしなければならない旨が定められております。

その宅建業法に基づいて重要事項説明書を交付し、説明しなければいけない事項としては、例えば下記の事項があげられます。

  • 売買の対象となる所有権の有無について
  • 抵当権等の制限物権について
  • 都市計画法、建築基準法の接道義務等の法令制限について

但し、上記宅建業法35条において「少なくとも」と記載されていることからわかるとおり、宅建業者が説明義務を負うものは法令で定まっているものに限られません。

もっとも、宅建業者に説明義務が生ずる事項というのは一概に決まるものではなく、当事者の地位や情報の重要性、従前の交渉経緯等から個別具体的に説明義務の発生が判断されます。

説明義務違反に基づいて損害賠償請求が認められる損害の範囲

仮に、売主又は仲介業者に説明義務違反が認められたとしても、買主側に損害の発生が認められ、また、損害と説明義務違反の間に相当因果関係が認められなければ、売主または仲介業者に対する説明義務違反に基づく損害賠償請求は認められません。

それでは、どのような損害であれば売主または仲介業者に対する説明義務違反に基づく損害賠償請求が認められるかですが、この点については一概に言えないところもあり、裁判例上も損害賠償をすべき損害であると認めている項目または認めていない項目があります。

裁判例上認められた損害の範囲としては、例えば、不動産を現在保有している場合における不動産の現在価格と購入価額との差額分であったり、既に問題となった不動産を売却した場合における不動産の売却価額と不動産の購入価額との差額を認めているケースもあります。

更に、住宅ローンの金利分や弁護士費用も認めているケースもありますが、これらについては、一概には決まらないようです。

買主側にも過失がある場合は過失相殺がされる場合がある。

説明義務違反に基づく損害賠償請求が認められるとしても、買主側に過失がある場合は、損害額の何割かが減額されてしまうこともあります。

特に、買主側が業者の場合は、購入にあたっての調査義務があるので、過失相殺が認められる傾向にあります。

したがって、請求が認容される見込みがある場合であっても、過失相殺されることを考慮していおいたほうがよいでしょう。

終わりに

以上、不動産売買における売主または仲介業者の説明義務違反に基づく損害賠償について概略を解説いたしました。

説明義務違反に基づく損害賠償請求が認められるためには、法律上売主側に説明義務が認められるに加えて、説明が十分になされていなかったことの立証の問題もありますので、専門家によるご相談をされた方が良いと思います。

ご相談がある方は、中野区の不動産に関する法律問題を扱う吉口総合法律事務所にお気軽にご相談ください。

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